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Twitter300字ss・「試す」

 300字という字数内で一週間掛けて完結した小説を書き、それを公開して交流や宣伝に役立てようという「Twitter300字ss」。
 2018年に入って初の300字SS。第三十九回目のお題は「試す」です!

 
『王様のお菓子』

 それは一年に一度の運試し。
 金貨入りを当てた者には幸運が訪れるという伝統のパイ菓子。それを均等に切り分けるという、極めて責任重大な役目を突如押し付けられた若き神官は、小刀を手にパイを睨む。
「らうー、はやくぅ」
 今にも涎を垂らさん勢いで急かしてくる養い子に「分かった分かった」と返事をし、ええいままよ、と小刀を振り下ろせば、刃先から伝わる鈍い手ごたえ。

「あっ」

「あー!!」
 絶叫を聞きつけて厨房から顔を出した女将は、揃いも揃ってこの世の終わりを見たような顔をしている子供達をぐるりと見渡して、あらあらと片目を瞑ってみせた。
「つまり、今年の王様はラウルさんってことね」
「えっいやそんな」
「そんなのありかよー!」



『tasting』

 ひょんなことからコンビを組むことになった相棒は、まさに『万能』だ。仕事は言うに及ばず、シャツのアイロン掛けから庭木の手入れまで、何をさせてもそつなくこなす――はずだった。
「おい。主に毒見させるってのはどういう了見だ」
「毒見とは失礼な。新作を試してみてくださいとお願いしただけではありませんか」
 ほかほかと湯気を立てている『銀色のコーヒー』を前に、稼働三十余年のアンドロイドは満面の笑みを浮かべている。
「心配なさらずとも、数値上は美味なはずです」
「お前の味覚センサーは信用できない!」
「ええ。だからあなたの味見が必要なのですよ。我が主」
 半人前のスパイと旧式アンドロイド。足してようやく一人前というわけだ。




『王様のお菓子』

 「でんたま」より、新年のお菓子を切り分けるラウルと村の子供達の図、でございます。
 「試す」というお題を見た瞬間「運試し」→「ガレット・デ・ロワ」が出てきたので、ちょっと季節外れですがこのネタで書きました。
 実はこれ、元々「第5回300字SSポストカードラリー」で「お菓子」というお題を見た時に考えていたネタだったのですが、その時はルフィーリが引き当てて女王様ぶりをいかんなく発揮する、という話で、うまくオチがつかずに没にしたのです(^^ゞ
 思いがけないところでネタをサルベージ出来て良かったです。
 
 この後、紙で作った王冠を被せられ、一日中「王様」扱いされてむず痒い思いをするラウルの姿が目に浮かびます……。事情を聞いた村長とか、それはもう恭しい態度で接してくれそうです。(そしてルフィーリはその日一日むくれて口きいてくれなさそう)

 ちなみにこの「ガレット・デ・ロワ」はフランスで公現祭(エピファニー)に食べられている伝統のお菓子で、元々はソラマメを一粒入れて焼いたパイを家族で切り分けて食べ、ソラマメが入っていた部分を引き当てた人には一年間幸運が訪れる、というものだそうです。
 最近では陶器の小さな人形を入れることがほとんどだそうですが、コインを入れるところもあるそうなので、作中では金貨にしておきました。

 しかし、本当にこういう風に「切り分けた人が当ててしまう」こともあると思うんですが、その場合はやはり、切った人に幸運がもたらされるのだろうか……。


『tasting』

 こちらは去年の「カケラ Vol.02」に出した「彼の右腕」より、『主』とアンドロイドの小話。
 アンドロイドの彼は喫茶店のマスターを長年やっていたわけですが、新しい豆や焙煎方法を試したい時は、常連さんが犠牲味見役になってたんでしょうね(^^ゞ
 味覚センサーを新しいものに載せ換えればいい話なのですが、何せ旧型のため現行のパーツと互換性がなく、フルオーダーメイドになるため、保留にしているようです。
[ 2018/02/03 ] Short Stories | TB(0) | CM(0)

Twitter300字ss・「贈り物」


 300字という字数内で一週間掛けて完結した小説を書き、それを公開して交流や宣伝に役立てようという「Twitter300字ss」。
 第三十八回目のお題は「贈り物」です!
 これが2017年最後のTwitter300字ssとなります。


『聖者の贈り物』

 彼女の故郷では、冬至の夜に聖者がやってくるという。
 いい子には贈り物。悪い子にはお仕置きを。
 贈り物を待ち望む子供達は神妙な面持ちで家の手伝いに精を出す。


「この街には、そういった風習はないのですね」
 そう呟く少女は、どこか寂しげで。
 だったら何か贈って驚かせてやろうぜ、と息巻く友人の言葉に頷いたはいいものの、何を贈ればいいか見当がつかず、秘密の作戦会議は小一時間も続いている。
「人形は?」
「人形に人形やってどうすんだよ!」

「まったく……全部聞こえているのですよ」
 白熱する議論に苦笑を漏らしつつ、とっておきの茶菓子を追加する。
「二人とも、お茶が入りましたよ」
 慣れないことで頭を悩ます二人に、せめてもの労いを。 




 『垂れ耳エルフと世界樹の街』より、骨董店の片隅でひそやかな作戦会議の図、でした。

 《世界樹の街》に「クリスマス」そのものはありませんが、いくつかの街区には似たような冬の祭があるようです。
 ユージーンの暮らす十二番街やオルトの暮らす一番街にはそういったお祭りがないので、少女の語る「冬至を祝う風習」は物珍しかったのでしょう。

 素知らぬ顔でお茶を配る少女は、きっと当日まで知らぬ存ぜぬを通しつつ、二人への贈り物をこっそり準備して、お互いに驚かしあうんじゃないかなと思います(^^ゞ
[ 2017/12/02 ] Short Stories | TB(0) | CM(0)

Twitter300字ss・「酒」


 300字という字数内で一週間掛けて完結した小説を書き、それを公開して交流や宣伝に役立てようという「Twitter300字ss」。
 第三十七回目のお題は「酒」です!


『大人の味』

『面白いから食わしてみな』
 そう唆されて、食後に出したのが失敗だった。
「なんだか、体がふわふわするのです~」
 アハハウフフと笑い続ける少女を前にして、どうしたもんかと溜息をつく。
「ブランデーケーキ一切れでこれだと、本物のお酒を飲んだらどうなるんだろうね、彼女」
「飲ませたら危ないな。ってか、おっさんは平気なのかよ」
「え、何が?」
 本来の標的はと言えば、顔色も変化なし、言動もいつも通り――。
「ところで、これはパン屋の髭親父の差し金だと思うけど、そうやってほいほい人の言葉に乗せられるの、君の悪い癖だよね」
 ぎょっとして店主の顔を窺えば、ああ――目が据わっている。
(こういうことか……)
「聞いてる? オルト君!」




 『垂れ耳エルフと世界樹の街』より、いつもの三人にご登場願いました。
 ユージーンは下戸の甘党だろうな、魔導人形の彼女も弱そうだな、とか思ったらこんな感じに。
 このあとひたすら、やたら饒舌に日頃思ってることをぶちまけられた挙句、翌朝になって「僕、何か言った?」とか言われそう。
 しかもぐちぐち言われた内容のほとんどが「君がいい人すぎて心配」だったりして。

[ 2017/10/07 ] Short Stories | TB(0) | CM(0)

Twitter300字ss・「雲」

 300字という字数内で一週間掛けて完結した小説を書き、それを公開して交流や宣伝に役立てようという「Twitter300字ss」。
 第三十六回目のお題は「雲」です!
 前回はネタが思い浮かばず参加できなかったので、今度こそ!!


『雲海の燕』


 クラウディオ・シティは「雲海に浮かぶ街」だ。正しくは世界そのものが雲海に覆われ、雲の下を知る者はいない。
 どこまでも広がる空、そして雲海を漂う大小の浮島。それが世界のすべてであり、人々はそれを疑いもしない。
 浮島に暮らす人々の「足」はずばり航空機。一人乗りの小型機から島々を巡航する大型の飛空艇まで様々な種類があるが、中でも子供達に人気なのが「雲海の燕」だ。
「おかあさーん、《燕》が来たよ!!」
 歓声に応えるように、銀色の機体が翼を振る。尾翼に描かれた《燕》のエンブレムは、各地に手紙を届ける「郵便機」を示すマークだ。
 そこに手紙を待つ人がいる限り、彼らはどこへでも飛んでいく。
 果てなき雲海の、その彼方まで。




 実はこれ「垂れ耳エルフと世界樹の街」シリーズに出てくる九番街の話なんですが、ここだけ読むと分かんないよね、と思って独立させました(^^ゞ
 九番街は雲海の街。この街のみ、手紙はオルトのような翼人の配達人ではなく、郵便飛行機が配っています。


[ 2017/09/02 ] Short Stories | TB(0) | CM(0)

Twitter300字ss・「渡す」


 300字という字数内で一週間掛けて完結した小説を書き、それを公開して交流や宣伝に役立てようという「Twitter300字ss」。第三十四回目のお題は「渡す」です!


『合鍵』

「はい」
 まるで新聞でも手渡すように、ひょいと差し出されたのは、一本の鍵。
「なんだよ、これ」
「鍵だけど?」
「んなこたぁ分かってら! なんで俺がこの店の鍵を持たなきゃならねえんだ!」
 そもそも、この店の扉に鍵などついていただろうか。訝しむオルトに、店主は得意げに胸を張った。
「女の子が寝泊まりする家に鍵がかからないのは不用心だと思って」
 とても、壊れかけた扉を一年も放置していた人物の発言とは思えない。
「鍵があれば、いつでも入れるでしょ」
 これで安心して昼寝が出来る、と手放しで喜ぶ店主に、やれやれと頭を掻く。
 信用してるから、などとは決して言わないくせに、こういうことを平気でやるから、この男は油断ならないのだ。



『カササギ』

 連結橋を接続する時は、いつだってドキドキする。
 小型宇宙船とコロニーを繋ぐ白い連結橋。ナビゲーターの指示に従って停止し、ゆっくりと伸びてくる武骨な「翼」を、今か今かと待ち構える。
『こちらコントロール。《カササギ》の接続を確認。これよりハッチを開けます」
「了解!」
 返事をするのももどかしく、ブリッジを飛び出して薄暗い廊下をひた走る。
 三重の機密扉の向こう、細長い通路の先にはきっと――待ち焦がれた君がいる。

「お帰りなさい、あなた!」
「ただいま、奥さん」

 コロニー《ベガ2》と外宇宙船《アルタイル》を繋ぐ連結橋。その名の由来は、もう誰も知らないけれど。
 失われた神話をなぞるように、一年に一度の逢瀬は果たされる。





『合鍵』
…拙作『世界樹の街』シリーズ(仮)(だんだん短くなっていく仮シリーズ名w)より、骨董店の合鍵を渡されるオルト君の巻。
 テキレボ5頒布のコピー本「垂れ耳エルフと世界樹の街」をご覧の方はご存じの通り、オルトが配達員として骨董店に通い始めた頃から、骨董店の扉は壊れていて、蹴り飛ばさないと開かない仕様でした(笑)

 春になってようやく直したようですが、その時はまだ鍵がついていなかったはず。
 自称・魔導人形ちゃんが転がり込んできてから、急遽取り付けた模様です。

 骨董品が数多くあるのに不用心すぎやしないかと思いますが、そもそもあの店にあるのは「普通の人には価値が分からない」ガラクタばっかりな気がする……。

『カササギ』
…七夕の神話をSF風味に味付けてみましたヽ(^。^)ノ
 実は「渡す」というお題を見た時、最初に思いついたのは「橋渡しをする」で、そこからこういう流れに。
 遥か未来、遠い宇宙の果てで。失われた神話をなぞるように。
 
[ 2017/07/01 ] Short Stories | TB(0) | CM(0)