MEMO

日常の呟きから小説裏話まで
2017年08月 ≪  123456789101112131415161718192021222324252627282930 ≫ 2017年10月
TOP ≫ CATEGORY ≫ Short Stories
CATEGORY ≫ Short Stories
       次ページ ≫

Twitter300字ss・「雲」

 300字という字数内で一週間掛けて完結した小説を書き、それを公開して交流や宣伝に役立てようという「Twitter300字ss」。
 第三十六回目のお題は「雲」です!
 前回はネタが思い浮かばず参加できなかったので、今度こそ!!


『雲海の燕』


 クラウディオ・シティは「雲海に浮かぶ街」だ。正しくは世界そのものが雲海に覆われ、雲の下を知る者はいない。
 どこまでも広がる空、そして雲海を漂う大小の浮島。それが世界のすべてであり、人々はそれを疑いもしない。
 浮島に暮らす人々の「足」はずばり航空機。一人乗りの小型機から島々を巡航する大型の飛空艇まで様々な種類があるが、中でも子供達に人気なのが「雲海の燕」だ。
「おかあさーん、《燕》が来たよ!!」
 歓声に応えるように、銀色の機体が翼を振る。尾翼に描かれた《燕》のエンブレムは、各地に手紙を届ける「郵便機」を示すマークだ。
 そこに手紙を待つ人がいる限り、彼らはどこへでも飛んでいく。
 果てなき雲海の、その彼方まで。




 実はこれ「垂れ耳エルフと世界樹の街」シリーズに出てくる九番街の話なんですが、ここだけ読むと分かんないよね、と思って独立させました(^^ゞ
 九番街は雲海の街。この街のみ、手紙はオルトのような翼人の配達人ではなく、郵便飛行機が配っています。


Twitter300字ss・「渡す」


 300字という字数内で一週間掛けて完結した小説を書き、それを公開して交流や宣伝に役立てようという「Twitter300字ss」。第三十四回目のお題は「渡す」です!


『合鍵』

「はい」
 まるで新聞でも手渡すように、ひょいと差し出されたのは、一本の鍵。
「なんだよ、これ」
「鍵だけど?」
「んなこたぁ分かってら! なんで俺がこの店の鍵を持たなきゃならねえんだ!」
 そもそも、この店の扉に鍵などついていただろうか。訝しむオルトに、店主は得意げに胸を張った。
「女の子が寝泊まりする家に鍵がかからないのは不用心だと思って」
 とても、壊れかけた扉を一年も放置していた人物の発言とは思えない。
「鍵があれば、いつでも入れるでしょ」
 これで安心して昼寝が出来る、と手放しで喜ぶ店主に、やれやれと頭を掻く。
 信用してるから、などとは決して言わないくせに、こういうことを平気でやるから、この男は油断ならないのだ。



『カササギ』

 連結橋を接続する時は、いつだってドキドキする。
 小型宇宙船とコロニーを繋ぐ白い連結橋。ナビゲーターの指示に従って停止し、ゆっくりと伸びてくる武骨な「翼」を、今か今かと待ち構える。
『こちらコントロール。《カササギ》の接続を確認。これよりハッチを開けます」
「了解!」
 返事をするのももどかしく、ブリッジを飛び出して薄暗い廊下をひた走る。
 三重の機密扉の向こう、細長い通路の先にはきっと――待ち焦がれた君がいる。

「お帰りなさい、あなた!」
「ただいま、奥さん」

 コロニー《ベガ2》と外宇宙船《アルタイル》を繋ぐ連結橋。その名の由来は、もう誰も知らないけれど。
 失われた神話をなぞるように、一年に一度の逢瀬は果たされる。





『合鍵』
…拙作『世界樹の街』シリーズ(仮)(だんだん短くなっていく仮シリーズ名w)より、骨董店の合鍵を渡されるオルト君の巻。
 テキレボ5頒布のコピー本「垂れ耳エルフと世界樹の街」をご覧の方はご存じの通り、オルトが配達員として骨董店に通い始めた頃から、骨董店の扉は壊れていて、蹴り飛ばさないと開かない仕様でした(笑)

 春になってようやく直したようですが、その時はまだ鍵がついていなかったはず。
 自称・魔導人形ちゃんが転がり込んできてから、急遽取り付けた模様です。

 骨董品が数多くあるのに不用心すぎやしないかと思いますが、そもそもあの店にあるのは「普通の人には価値が分からない」ガラクタばっかりな気がする……。

『カササギ』
…七夕の神話をSF風味に味付けてみましたヽ(^。^)ノ
 実は「渡す」というお題を見た時、最初に思いついたのは「橋渡しをする」で、そこからこういう流れに。
 遥か未来、遠い宇宙の果てで。失われた神話をなぞるように。
 

Twitter300字ss・「かさ」


 300字という字数内で一週間掛けて完結した小説を書き、それを公開して交流や宣伝に役立てようという「Twitter300字ss」。第三十三回目のお題は「かさ」です!

 傘・笠・暈……と色々悩んだ末にこうなりました。


『キノコの森の音楽会』


「今夜、『月光キノコの森』で音楽会があるんだ」
 そんな話が出たのは、雨に降り込められた午後。
「なんだそりゃ?」
 情報通の配達人が首を傾げるくらいだから、新入りの看板娘が知る由もない。
「まあまあ、騙されたと思ってついて来て」
 揃いの雨具に身を包み、向かったのは世界樹の根元。
 うねる根っこの隙間を通り抜け、辿り着いたのは――巨大キノコが生い茂る森。
「なんだこりゃ!」
「とても幻想的です!」
 ぼんやりと光るキノコの下、奏でられる楽の音はしっとりと柔らかく。
 巨大なかさが弾く雨粒は、小気味のいいリズムを刻む。
 キノコの光が薄れ出したら、終幕の合図。
「長雨の夜に、またお会いいたしましょう!」
 挨拶と共に、闇の帳が降りた。




 拙作『垂れ耳エルフと世界樹の街』シリーズ(と言っていいのだろうか)より、骨董店のぐうたら店主ユージーン、世話焼きな配達人のオルト、いつの間にかちゃっかり骨董店の看板娘に収まった自称『魔導人形』ちゃんのトリオにご登場願いました。

 企画説明文に「キノコのかさ」等って書いてあったのを見た瞬間に、こういうネタが思いついてしまい(^^ゞ

 ちなみに、この 『世界樹の街』は街区ごとに色々な世界が繋ぎ合わさって出来ているのですが、肝心要の『世界樹』も、色々と謎が多いようです。


 

Twitter300字ss・「色」


 300字という字数内で一週間掛けて完結した小説を書き、それを公開して交流や宣伝に役立てようという「Twitter300字ss」。第三十二回目のお題は「色」です!


『一輪の花』

 北国の春は遅い。冬枯れの庭園からはようやく雪が消えたものの、水墨画のような淡い色合いのまま、ひっそりと息を潜めている。
 とはいえ、庭師にとってはこれからが忙しい。施肥や剪定、害虫駆除から植え替えまで、花の季節を前に、やることが山積みだ。
 公務の息抜きだと称してやってきた若き女王は、そんな地道な作業を、飽きもせずに見つめている。
「見てたって面白くないだろう? 花が咲いてから見に来ればいいのに」
「何を言ってるの。どんな時だって、この庭は美しいわ」
 枯れた噴水の端を辿りながら、ふわりと裾を翻して笑う。
「私は好きよ」
 色を失った庭に咲く、艶やかな笑顔。
 ――そう。君こそが、僕の世界を鮮やかに染め上げる、一輪の花。




 「でんたま」Spin Off Story:《極光王国奇譚》より、ライラ国の若き女王と、その幼馴染である園丁のお話。

 「色」と聞いた瞬間に、「モノクロの世界に一輪だけ咲く赤い薔薇」の様子が浮かびました。
 彼女らの暮らすライラ国は北大陸最北端の国。春は遅く、夏は短く。一年の殆どが雪で覆われる、厳しい環境です。

 

Twitter300字ss・「散る」


 300字という字数内で一週間掛けて完結した小説を書き、それを公開して交流や宣伝に役立てようという「Twitter300字ss」。
 前回は参加できなかったので今度こそ! というわけで、第三十一回目のお題は「散る」。同日開催のテキレボ5内有志企画「第4回300字SSポストカードラリー:桜」にちなんだ、後夜祭的なお題です!


『百年の刹那・風にとける花』

 はらはらと舞う薄紅色の花びら。遥か頭上から降り注ぐそれは、地上に降り積もる頃には色と重みを失って、やがて風に攫われて消えていく。
 予告なく咲き、風にとける花。百年に一度、数時間しか咲かないという奇跡の花は、散り際まで神秘的だ。
「なんだかもったいないよなあ」
 二度とは見られぬ光景を見上げながら誰にともなく呟けば、ぐうたらエルフはそう? と笑みを零した。
「僕は好きだよ。この潔さ」
 いつもと変わらぬ笑顔が、なぜか胸に沁みる。
 彼もいつか、この花びらのように――誰にも気づかれず、まるで最初からいなかったかのように――消えてしまいそうで。
「あんたは消えるなよ」
 思わず口をついた言葉に、男はただ静かに笑うだけだった。





 お題が「桜」とリンクしてましたので、こちらもポストカードラリー「桜」に出した「百年の刹那」にリンクしたお話にいたしました!
 
 百年に一度咲くという世界樹の花。贅沢な花見を楽しむ「垂れ耳エルフ」の面々です。
 ぐうたらエルフことユージーンは超・長命種なので、この花を見るのも何回目だっけ、というレベル。
 一方、一緒に花を見上げている翼人のオルト君は短命種なので、「次」はもうありません。
 
 それなのに、オルトがユージーンの心配をするというのもおかしな話ですが。
 あのおっさんは気づくとしれっといなくなっていそうな気がするよな、と思ったらこんな話になりました(^^ゞ


 満開の桜も好きですが、はらはらと舞い散る桜吹雪の方が実は好きだったり。
 こぼれる刹那の美しさは、すぐに散ってしまう桜ならではですね。

 萎れる前に潔く、美しいまま散っていく。桜は、そんなところも好まれるのかもしれません。