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date :2016年11月

《gilders》・伝説の都市~蜃気楼の町~


 長らくこのブログにて連載(?)していた「16周年記念企画・「伝説の都市」 本文」をまとめて加筆訂正したものを、《gilders》・伝説の都市、~蜃気楼の町~としてサイトにアップしました!

 16周年は去年(!)だったので、大変ながらくお待たせしてしまいましたが、無事エンドマークを打つことが出来てホッとしています。

 この「伝説の都市」は、元々お題を思いついた時点でいくつか候補の話が浮かんでいたのですが、どうしても一つに絞れず、それならいっそ皆様のお力と知恵を拝借してまとめてもらっちゃおう! という、実に他力本願な企画でございました(+_+)

 いくつかのお話の中で、蜃気楼都市《シャンディア》のエピソードが最初に選ばれて、そこからぐんぐんと話の骨子が固まっていき、プロット完成までは大分いいペースで進んでいたのですが……。プロットから本文を起こすのに、こんなに時間をかけてしまうとは……。まったくもって申し訳ございませんm(__)m

 そしてこの「伝説の都市」、短編連作を謳っている《gilders》の中で、最長のお話と相成りました(笑) 今までは「流星雨」がダントツだったのですが、まさかそれを上回る長さになるとは思いもよらず、そりゃ時間かかるわな、と(^^ゞ

 リダの大技で大団円、という爽快なお話ではありませんが、《gilders》の中でも印象に残るエピソードになったのではないかと思います。

 お力をお貸しいただいた皆様、本当にありがとうございました!!


 「伝説の都市」が終わったことで、長らく挑戦を続けている「36 etude」も残り3つとなりました。
 残っているのは「深い森」「絆」「果てなき道程」の3つ。これらはすべて《gilders》のお話になる予定です。
 「流星雨」から続く、エンディングへの長い道のり。まだしばらくお付き合いいただくこととなりますが、暖かい目で見守っていただければ幸いです。


16周年記念企画・「伝説の都市」 本文・「結」


 一年以上かかってしまいましたが、ようやくエンドマークを打つことが出来ました!
 16周年記念企画・「伝説の都市」 本文・「結」を公開いたします。




 遺跡での二日は、あっという間に過ぎた。
 風と砂の音に耳を澄ませ、太陽の運行を見守るうちに一日が終わる。
 夜は星々の煌めきと語らい、焚火の暖かさに生命を実感する。
 火を囲みながら、寝物語にと語ってくれるナジェム老の半生は、まるでいくつもの物語を繋ぎ合わせたように波乱万丈で。数多くの苦難の中に小さな喜びや楽しさを見出すことで、どこまでも軽やかな『彼』が出来上がっていったのだと思い知らされる。
 自分はいつか、こんな風に人生を語れる老人になれるだろうか。
 そんなことを考えていたら、いつの間にか眠ってしまったらしい。
「起きんか、少年」
 突然ゆさゆさと肩を揺すられて、はっと顔を上げれば、東の空はすでに白み始めていた。
 眠い目をこすって起き上がれば、どうやら先に叩き起こされたらしいリダが、険しい顔で砂漠の彼方を睨みつけている。
「リダ?」
「無駄口を聞いている暇はないぞ。ほれ、あの朝日をよーく見ておるんじゃ」
 その言葉に従い、じっと目を凝らす。
 次第に明るくなっていく空と大地。その狭間からゆっくりと姿を現す太陽。世界に熱をもたらす巨大なる火の玉が、その全貌を露わにしたその時――。
「あれ? なんか、太陽がぼやけて見える」
 目をごしごしと擦るギル。その横で目を眇めて朝日を見つめていたリダが、誰にともなく呟いた。
「あれは、蜃気楼? いいや――」
「シャンディアだ!」
 太陽を透かして、ぼんやりと姿を現す蜃気楼の街。その姿は、まるで水面に映った影のように揺れて定まらない。
「よし、行くよ。捉まって!」
 そういうが早いか、何やら複雑な詠唱を始めるリダ。聞き慣れたこの音律は間違いない。飛行呪文だ。
「ナジェムさん、あの杖に掴まって!」
 慌ててそう促し、自身もばっと手を伸ばす。その手が杖を握りしめた次の瞬間、リダの呪文が完成した。
「行くよっ!」
 ふわりと浮き上がる三人の体。そして、そのままぐんと高度を上げ、疾風の如く砂漠を翔け抜ける。
「リダ飛ばしすぎぃぃぃぃ!!」
「ひょー、こりゃ早いわい!」
 揺らぐ街並みは、すぐそこだ。



 それはまるで、薄明の中に立ち上る陽炎のよう。
「ここが……シャンディア?」
「そう、シャンディアの正面玄関、ストラ大正門じゃ」
 ゆらゆらと揺れ動く石造りの門をおっかなびっくり潜り抜ければ、どっと溢れ出す光と音。
 幻の太陽に照らされて、日干し煉瓦の街並みは昼間のように白茶けた姿を晒している。
「ああ……やはり……あの日のままだ」
 そう、目の前に広がるのは、在りし日の姿そのままの光景。中央広場へと続く大通りは行き交う人々の声に溢れており、その活気たるや、これが蜃気楼だということを忘れてしまいそうなほどだ。
「! リダ、何してるんだよ!」
 大通りのど真ん中、人の流れを遮るように立ちはだかるリダ。折しも、広場の方から急ぎ足でやってきた行商人は、リダに気づく様子すらなく、小太りの体を揺らしながら真正面からぶつか――ることはなかった。
 まるで風のようにリダの体をすり抜けて、何事もなかったかのように通り過ぎていく男を振り返って、リダはなるほど、と肩をすくめてみせる。
「こちらの姿は、まったく認識されていないみたいだね」
 わざわざ体を張って確かめるあたりがいかにもリダらしい。それなら、とギルは近くの商店へ歩み寄り、軒先に並べられた果物に手を伸ばしてみる。案の定ギルの手は見事に空を切り、あまりの手ごたえのなさに妙な笑いが漏れた。
「うわ、ホントだ」
 これではまるで、こちらが幽霊にでもなった気分だ。
「分かっちゃいるけど、ちょっと気持ち悪いなあ」
 ぼやきつつ、道行く人々の話に耳を傾ける。果物の新鮮さを得々と語る店主、相槌を打ちながら値切り交渉を始める老婆。その傍らを駆けていくのは、家の手伝いから解放されて遊びに行くらしい子供達の一団。広場は人が多いからやめなさい、と釘を刺しているのは母親だろうか。今日は市が立つ日だからね、という声に賑やかに返事をして、広場とは反対方向へ走っていく子供達。その勢いに驚いた小鳥が慌てて飛び上がり、青空へと羽ばたいていく。
 目の前に広がる光景は平和そのもので、砂嵐の気配など微塵も感じられない。
「砂嵐が来るのはどのくらい後のことなのかしらね」
 ねえ、じいさん、と後ろを振り返るも、そこにナジュムの姿はなかった。慌てたギルが素早く周囲を見回せば、土埃の立つ大通りの遥か彼方、どんどんと遠ざかっていく老人の背中を発見した。
「リダ、あそこ!」
「もう! どこ行くのよじいさん!」
 地理に詳しい彼とはぐれてしまっては、こっちが迷子になりかねない。人とぶつかる心配がないのを幸いに、二人は通りのど真ん中を突っ切って走り出した。
 通りの向こうは市が立つ中央広場だ。買い物を済ませて家路を急ぐ主婦、荷車を押して市へと向かう商人。広場が近づくにつれて賑わいは増し、何度も老人を見失いかける。
「もう、邪魔だったら!」
 通りを無理やり横切ろうとしている馬車に視界を遮られ、悪態をつくリダ。触れることのできない幻だと頭では分かっていても、つい足を止めてしまう。その一瞬の躊躇が、ますますナジェムとの距離を広げていく。
「ああ、もう!!」
 リダの苛立ちが極限に達しようとした、まさにその時。

 高らかな鐘の音が、響き渡った。

 あんなにざわついていた街が一瞬、静まり返る。
 やがて聞こえてきたのは、悲鳴に近い叫び声。

「砂嵐だ!」
「砂嵐が来るぞ!」

 まるで金縛りが解けたかのように、一斉に動き出す人々。ぶつかる荷台。倒れる屋台。あちこちで悲鳴が上がり、子供の泣き声が響く。
「王宮だ! 王宮へ急げ!」
「避難してください! まだ時間はあります、慌てずに避難を!」
 避難を呼びかけているのは、駆けつけてきた兵士や神官達だ。その声を聞いた人々は一目散に、街の中心部を目指して走り出す。それはまるで、獅子に追われる水牛の群れのよう。地響きのような足音が砂の街を支配し、鐘の音が緊迫感を煽る。
「まずい! もう、時間だ」
「ナジェムさん!」
 慌てて目を凝らし、人波にかき消えそうな背中を懸命に追いかける。その間にも、町中のあちこちから逃げてきた人々が、街の中心にそびえる王宮を目指して押し寄せてくる。
「大神官様がお守りくださるぞ!」
「配置を急げ! 詠唱が間に合わない」
「しかし、あれは禁じられた術では……」
 喧騒の中、神官達のそんな会話が飛び込んできた。走りながら目を走らせれば、兵士達が人々を王宮へと誘導しているのに対し、神官達は人々の流れに逆らうように、外壁を目指して走っている。
「じいさんの推測通りだね。あいつら、禁呪を使う気なんだ」
 走りながら、吐き捨てるように呟くリダ。その声をかき消すように、壁の向こうから轟々という禍々しい音が響いてきた。
「リダ、砂嵐が!」
「分かってる! さっさと合流して、ひとまず逃げるよ!」
 あの砂嵐も幻だ。リダの髪を揺らすことすら出来ないはずだ。
 それでも、本能が叫んでいる。ここはまずい。早く逃げろと。
「いた! ナジェムさん!」
 ようやく追いついたナジェムは、なぜか道のど真ん中で立ち尽くしていた。
「ちょっと、じいさ――」
 怒鳴りつけようとして、ナジュムの双眸から涙が溢れ出していることに気づく。
 舗装すら途切れた細道の向こうをじっと見つめるナジェム。その揺れる瞳に映っているのは――。
「――ナジェム! そんなところにいたの。早くおいで!」
 こちらに向かって大きく手を振る女性。赤い衣に身を包み、豊かな黒髪を三つ編みに結って、その瞳は太陽の如く金色に輝いている。
「お母さん――!!」
 ぎょっと立ち尽くすギルの目の前で、勢いよく駆け出していく老人の姿は、一歩踏みしめるごとに、どんどんと若返っていく。壮年から青年、少年、そして幼い子供の姿へ――。
「ナジェムさん!?」
 慌てて追いかけようとしたギルは、背後から素早く伸びてきた腕に、抱きしめるようにして引き留められて、ひっくり返った声を上げた。
「リダ!?」
「いけない、ギル! あんたまで巻き込まれる!」
「だって!」
「駄目だ!」
 通りの向こう、両腕を広げて待ち構えていた母の胸に、勢いよく飛び込んだ子供は、嬉しそうに笑い声をあげた。
 力強く抱きしめてくる母に照れくさそうに抗議をして地面に下ろしてもらい、そしてしっかりと手を取り合って走り出す。
 最後に、肩越しに振り返り、小さく手を振る。

――ありがとうよ――

 近づく砂嵐の音で掻き消され、決して聞こえるはずのない声は、確かに二人の耳へと届いた。



 目の前の景色が大きく揺らぎ、そして驚くほどあっけなく宙に溶ける。
 賑わう街も、襲い来る砂嵐も、どこにもなく。目の前にはただ茫漠たる砂漠が広がるのみ。
 二人揃って白昼夢でも見ていたのだろうか。どうやら同じことを考えたようで、どちらからともなく顔を合わせた二人は、同時に深く息を吐いた。
「……ナジェムさんは、帰りたかったんだね」
「そうだね。何十年も、ずっと、この日を待ち望んでいたんだろう」
 最後に見せた満面の笑みが、砂上で煌々と輝く太陽と重なる。
 傍から見れば、彼は「助かった」側だ。しかし、唐突に故郷と家族を失った少年からすれば、自分こそが「取り残されてしまった」側だった。
 だからこそ彼は、その生涯をかけて故郷を――シャンディアを追い求め続けた。
「地図からはとっくに消えて、最後の一人もいなくなって、やがては人々の記憶からも失われる街、かあ……。なんだか切ないね」
 珍しくも感傷的なことを呟くギルの背中をぶっ叩いて、リダはなあに、と不敵な笑みを浮かべた。
「人々の記憶から消えてしまわないように、わたし達が語り継げばいい。……そしていつか、誰かがあの町を取り返す日が来るといいね」
 リダの口からこんな言葉が出るのは実に珍しい。だがギルはそれを茶化すことはせず、ただ頷いた。
「うん……また、会えるといいな」


 ――それは、砂漠を彷徨う、伝説の都市。
 手を伸ばせば遠ざかる、儚い幻。
 語りかける人もなく、返ってくる声もなく。
 ただひたすらに、同じ刻を繰り返す町。

 蜃気楼都市《シャンディア》は今もなお、時空の彼方を彷徨い続けている――。


 伝説の都市・終わり

twnvday・「雲」


 ずっと気になってたんだけど、いつもタイミングが合わなくて参加できてなかった「#twnvday」。
 今回のお題は「雲」だったので、ぎりぎりでひねり出しました(^^ゞ

 すぐツイートが流れてしまうので、早目に救出(^^ゞ





「雲」

 今日も今日とて雲一つない空。強化ガラスの窓を通して見えるのは、青を通り越して漆黒の『宇宙』だ。
「一度でいいから雲を見てみたいなあ」
「あんなの、ただの水蒸気だろ」
 浪漫を解さぬこいつとは、しばらく顔を合わせたくない。
 この狭い移民船の中では、とても難しいことだけど。




 元ツイートでは台詞の前にハッシュタグを入れてありますが、あれは改行すると一文字消費してしまうので(^^ゞ そこで雰囲気を変えたいなと思って挟み込んでるだけで、他に意図はないです(^^ゞ

 さり気なく「科楽倶楽部」の移民船SFネタだったり(^^ゞ そちらのハッシュタグ入れ忘れてたのですが拾って頂けて感謝です!

Twitter300字ss・「絵」


 300字という字数内で一週間掛けて完結した小説を書き、それを公開して交流や宣伝に役立てようという「Twitter300字ss」。
 第二十七回目のお題は「絵」。


 腹痛で大遅刻してしまいましたあああ(/_;)





『永遠の微笑み』


 倉庫の大掃除中、ガラクタの山の向こうで微笑んでいたのは、黒髪の美女を描いた肖像画。
 紫水晶を削り出したような双眸。雪花石膏の如き白く滑らかな肌。時代遅れの長衣すら魅力的に着こなして、挑戦的な微笑みを浮かべる美女には、何故か見覚えがあった。
「……誰だっけ?」
 ハタキを手に小首を傾げる弟子を背後から蹴り飛ばし、北の魔女はふん、と鼻を鳴らす。
「怠けてないでさっさと掃除!」
「ちょっと手ぇ止めただけだろー!」
 文句をたれつつ、再びガラクタの山と格闘を始める少年を横目に、「おかっぱチビ」の異名を持つ魔女は、自分の背よりも大きい絵画と向かい合う。
「まだ取ってあったのね、これ」
 在りし日の姿は、絵画の中で永遠となる。





 拙作「伝説の卵神官シリーズ」スピンオフ、《極光王国奇譚》。

 舞台は幻想世界ファーン北大陸にある「北の塔」。
 「北の魔女」の異名を持つ三賢人アルメイアと、その不肖の弟子ハルの、日常の一コマです。

 アルメイアは見た目十代の「おかっぱチビ」ですが、二十代半ばの「妹」がいるので、実年齢は察していただければ……。
 見た目がちびっちゃい理由は、未だ語れておりませんが、いずれ明らかに……(^^ゞ

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seeds

  • Author:seeds
  •  オリジナル小説サイト「星明かり亭」を運営するへっぽこモノカキ(^^ゞ
     猫好きだが猫アレルギー……orz

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